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BLACK editionの新作は日本人アーティストとのコラボレーション!

冬の寒さが和らぎ、東京でもあちらこちらで桃の花を目にする季節になってまいりました。 春の訪れを感じさせるのは、桃の香りと花粉症の気配だけではありません。   現在ショールームでは、先月のフランスでのデコオフ、メゾン=エ=オブジェで発表された 各ブランドの2019年春夏コレクションが続々と入荷し、発売準備を進めている真っ只中です。 今回はその中で先頭を切って発売された イギリスのBLACK edition (ブラック・エディション)の新作をご紹介しましょう。   壁面に描かれたのは、うっそうと繁る森林と、その前面に佇む湖。 日差しを受けて囁きあう木々、そしてその影を映してゆらめく水面の永遠を 切り取ったかのような世界が、静謐なモノクロームで表現されています。   これらの壁紙や生地に描かれた風景、 実は写真ではなく、全て木版画によるもの。 ブラック・エディションの新作は、 これらのアートワークからインスパイアされたコレクションとなりました。 「MIZUMI」(湖)、「HINOKI」(檜)と日本語のコレクションタイトルが示すとおり 日本人アーティスト、湯浅克俊氏の手による作品です。 左:湯浅氏 右:BLACK edition エミリー・モールド女史 BLACK editoion Instagram より     湯浅克俊 1978年東京都出身。 武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。 英国ロイヤルカレッジオブアートにて修士課程を修了後、 写真とデジタル技術を融合した木版画による作品を多く発表し、 イギリス、ドイツをはじめ世界各国で個展を開催。 Northern Print Award 受賞をはじめ、多くの国際的な展覧会に出展。 湯浅克俊氏HPより参照   今回のコラボレーションを生んだのも、 ブラック・エディションのデザインディレクター:エミリー・モールド女史が イギリスのあるグループ展で湯浅氏の木版画に出会い、 インスピレーションを得たことから実現したものだとか。 MANAS Instagram より   さて、この大変繊細な版画は一体どうやって作成されるのでしょう。 その手法は自身で撮影した風景写真をデジタル処理し、 木版に転写したものを彫刻で再現していくというもの。 デジタルに取り込んだものを、木版というアナログな手法でアウトプットする過程。 つまり摺り出される対象の陰影というリアルだけでなく、 その空気感までもを想像しながら彫り進めるというのは、 繊細で高度なテクニックを要すると同時に、 写真の捉える一瞬を構成する全ての物質を分解し、 一刻々々木板に刻み込むという作業を経ることで、写真では表現できない、 ある種の思想学的なプロセスが生じさせます。   今回のコレクションでは、その木版画作品を再びデジタル処理する事によって、 滑らかなシルクやメタリックな糸を使用した織物、プリントベルベットといった 様々なマテリアルによる表現へと進化しているのが実にユニークなところ。 先日行われたデコオフの会場では、 湯浅氏も会場に赴き、インスタレーションを開催していたそうです。 MANAS Instagram より 今回のコラボレーションでは、 決して直線ではない彫刻のラインを、織りのパターンで表現することが難しかったのだとか。   思えば、ウィリアム・モリスのデザインも元は、 木版に起したデザインを、ブロックプリントによって大量生産できるようにしたことから、 「アーツ・アンド・クラフト運動」が発展し、 一般市民の生活にも「デザインのある暮らし」が普及したのでした。   それから140年を経た現在、木版によるデザインがここまでの表現に進化したと考えると、 感慨深いものがありますね。     そんなモリス商会創業当時の貴重なブロックプリントによる壁紙や生地を 展示した「ウィリアム・モリスと英国の壁紙展」が、 いよいよ最終会場の横浜のそごう美術館に巡回してまいります。 開催期間は4月20日(土)~6月2日(日)まで。 東京近郊にお住まいの皆さま、 機会がございましたらぜひ、お出かけ下さい。